「ニッキンONLINE」創刊!
 
HOME > 「ニッキン」最新号から > ニッキン抄 > ニッキン抄 2023.2.24

ニッキン抄 2023.2.24

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 人生は公平ではない。平穏な暮らしでもそう感じる瞬間はあるが、いや応なく戦火に巻き込まれる理不尽への憤りはいかほどだろう▼戦下で教師をしていた書家の井上有一は、卒業式のため疎開先から小学6年生を連れ帰った1945年3月、東京大空襲に遭う。宿直していた校舎は近隣住民の避難場所だったが、火に囲まれて逃げ場を失い1千人以上が焼死した。翌朝、自身は数時間に及ぶ蘇生処置で生き残ったが、犠牲者の中には一緒に戻った児童8人も含まれていた。「倉庫内で聞きし親子断末魔の声 終生忘るなし」。33年後の作品「噫(ああ)横川国民学校」には、鬼気迫る書体でその日の惨状がつづられている▼1年前のロシアによるウクライナ侵攻後、殺害された民間人は7千人以上。両軍の死者は推定数十万人。停戦協議は途絶え、戦禍の長期化が懸念される▼戦争遂行と戦後復興はどちらも巨額を要するが、泉下からの声は後者を望んでいる。2023.2.24


ニッキンのお申し込み

ご購読のお申し込みは、インターネット・FAXで受付けしております。

申込用紙をFAX(03-3262-2838)またはお近くのニッキン支社・局までお送りください。

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事