ニッキン抄 2024.3.22
「春愁」(しゅんしゅう)。卒入学や異動などで身辺が落ち着かず、何となく気がふさぐ心境をいう春の季語だ。俳人の坪内稔典さんによると、この症状は周りに“伝染”するらしい。「一家の長が陥ると、いつのまにか春愁家族になる」と随筆に書いている▼防御法もあるという。大学ゼミの教え子に春愁を“発見”すると「シュンタロウ」「シュンコ」と呼んだそうだ。笑いを誘い、物憂さの広がりを防ごうとした。目に見えないメランコリーを見抜く観察眼あってのことだろう▼入社式まで一週間余り。社会に出る前の、ざわついた気持ちの学生は多かろう。今春卒の内定者に行った人材会社の調査では8割が「不安」と答えた。迎える側は入社前後のメンタル不調者に対するフォローに十分留意したい▼余談ながら、坪内さんの著書が発行されたのは約20年前。親しみを込めてもニックネームの使用は今のご時世、難しい。若い人との距離感の縮め方にふと悩む。2024.3.22
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