ニッキン抄 2024.4.12
名作を残した文豪にも言葉選びの失敗談はある。酒が入った高村光太郎は東京美術学校の先生だった森鴎外への揶揄(やゆ)がポロっと口から出た。「軍服にサーベル姿でいばらせれば誰でも鴎外だ」。そばにいた記者がゴシップ記事にし、当人の怒りを買った▼「大作家でも口はすべる」(彩図社)に教わった。片やこの人の失言は茶目っ気のある高村のそれとは程遠い。「野菜を売ったり、牛の世話をしたりと違い、知性の高い方たち」。静岡県知事が新入職員に向けて発した訓示だ▼本人はリップサービスのつもりだったろうが、職業を差別する発言と捉えられ非難が殺到。辞意を示した。不適切発言はこれまでも繰り返してきた。周囲の諫言(かんげん)に聞く耳を持たなかったのは残念だ。県政混乱による地域経済への悪影響を招いてはなるまい▼先の逸話では高村が鴎外宅へ出向き、話し合った末に和解した。現代は発言が瞬時にネットで拡散する時代。気分を害した人達への弁明はたやすくない。2024.4.12
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