ニッキン抄 2025.12.5
昨年の大みそかに家庭や企業、金融機関などで年越しした銀行券は124兆円。キャッシュレス決済の普及に伴い、2022年末をピークに減少に転じ、この年末も微減となる見通しだ▼日本銀行が紙幣製造を発注する国立印刷局は自社製へのこだわりが世界随一。紙すきや印刷用のインキ作りまで自前で手がける。手仕事にもこだわり、工芸官はお札の原画を手書きし、ビュランという特殊な彫刻刀で金属板に手彫りする。「針研ぎ3年、描き8年、美蘭（びらん）（ビュラン）咲くのは18年」と言われるほど研さんを積む▼だが新紙幣の発行は20年周期。だから腕を存分に振るえる本番は生涯に一度きり。昨年7月に刷新したばかりだから、次は44年ごろだろう▼造幣技術の粋を集めた芸術品を大量に保有したいという収集家はあまたいよう。だが物価高騰の折、財布から出ていくコレクションも多い。わが家で年を越す肖像はいかばかりか。2025.12.5
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