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社説 規模だけでは成長覚束ない

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 政府は11月28日、総額21兆円超の総合経済対策の裏付けとなる2025年度補正予算案を閣議決定した。一般会計の総額は18兆3千億円。うち経済対策の歳出は17兆7千億円で、財源の6割超を国債の追加発行に頼る。
 「責任ある積極財政」を掲げる高市早苗首相は、補正予算後の国債発行額が24年度の42兆1千億円を下回る点を強調するが、金融市場では財政拡張懸念が根強い。10月に1.6%台だった長期金利は、12月1日に、日本銀行の植田和男総裁の発言もあって一時1.875%に上昇した。
 今回の経済対策は「物価高対策」「強い経済の実現」「防衛力と外交力の強化」を3本柱とした。補正予算規模は24年度の13兆9千億円を上回り、コロナ禍を除けば最大だ。少数与党で政権を運営していくため、野党の要求を一定程度は飲まざるを得ず、総額が膨らんだ感は否めない。
 8兆9千億円を充てる物価高対策に盛り込まれた所得制限を設けない子ども1人当たり2万円の給付や、重点支援地方交付金の特別枠による「おこめ券」の配布推奨などにはバラマキ感もある。規模ありきでは、物価高を一時的にしのげても、経済成長による持続的な賃上げの実現は覚束(おぼつか)ない。強い経済の実現に向けた危機管理・成長投資の戦略分野への投資は重要だ。
 「円」が弱くなった一因は貿易・サービス収支の赤字や低生産性にあり、国際競争力ある産業育成は欠かせない。戦略投資分野としてAI(人工知能)や造船などを挙げているが、投資にあたっては、より効果を高めるための精査や、規制緩和などで民間投資を引き出す視点を求めたい。
 今回、持続的な賃上げに向け100億宣言企業の成長支援が盛り込まれた。人口減少が進む地方に、しっかりした中堅企業をつくることは、地域経済の持続可能性向上だけでなく、強い日本経済の実現にもつながる。金融機関も積極的に関与してもらいたい。2025.12.5


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