ニッキン抄 2019.1.25
映画「英国王のスピーチ」（2010年公開）は、コリン・ファースさん演じるジョージ6世の演説が見せ場だ。ドイツとの開戦にあたり、吃（きつ）音（おん）症で演説の苦手だった王がラジオ演説し、団結へと導く▼1月15日、英国議会は欧州連合（EU）との離脱合意案を大差で否決した。直後に「国民投票の結果を実現させるのが義務」と演説したメイ首相には苦悩が浮かぶ。1月21日の代替案でも分断は収まりそうにない▼もっとも混迷は当然かもしれない。16年6月の国民投票は「離脱支持」52％に対し、「残留支持」48％の僅差だった。落ち着きをみせる通貨ポンドをよそに、国民や企業、周辺国は「合意なき離脱」へ備え始めた▼映画の国王は「この重大な時、恐らく歴史上もっとも運命的なこの時に…」と呼びかける。状況は似てきたが、分断を団結に変える“名”演説を期待するのは楽観的過ぎよう。気を抜けば、思わぬところで「惑」を従えた“迷”に遭遇する。2019.1.25
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