ニッキン抄 2021.11.05
1905年12月、東京・千駄木の夏目漱石宅に風呂敷包みが届けられた。中身は猫が描かれたカレンダー。2カ月程前、世に出た「吾輩は猫である」の熱烈な読者からだった▼当時、動物の暦は珍しく、ご満悦の漱石は「柱にかけて眺めて居ります」と礼状を送った。小説に感動したファンと文豪との粋なやりとり。その仲介となったカレンダーが“不純”な目的で使われた疑念が浮上している。郵便局長が政治活動に流用したとされる問題だ▼年末年始の顧客訪問時に配るカレンダーは経費で購入が認められているが、これを全国郵便局長会が支援する国会議員の後援者らに配った疑い。コンプライアンス違反の恐れもある。日本郵政は実態把握に着手。訪問活動は当面取りやめるという▼折しも日本郵政株は政府の3次売却で民営化に区切りをつけたタイミング。カレンダーを介し、顧客とコミュニケーションを深められたはず。実態解明を急ぎ、本来の光景を取り戻してほしい。2021.11.05
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