ニッキン抄 2025.9.5
アイヌ文化研究者で参議院議員も務めた故萱野茂氏は、幼少時から昔話などを通して「クマは恐ろしいもの」と聞かされて育ったという。アイヌ民族はそうして「クマとの接し方を自然に身に付けていく」と著書で語っている(「よいクマ わるいクマ 見分け方から付き合い方まで」前田菜穂子共著)▼全国でその重みが増している。人の生活圏に出没するクマの目撃事例が相次ぎ、命を落とす痛ましい事故も起きた。出没地域では、人出が減るなど経済活動への影響も小さくないと聞く▼ただ、原因とみられる事態にまで思いをはせればクマだけを悪者にはできない。温暖化に伴う木の実などの餌不足や、家庭ごみによる「餌付け」は、人の問題だ▼アイヌ民族はヒグマを「キムンカムイ(山の神)」と呼んだ。問題を起こすヒグマは「ウェンカムイ(悪い神)」と呼び、明確に分けた。萱野氏は「『ウェンカムイ』にしてしまうのが一番の問題」とする。共生の道を探りたい。2025.9.5
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