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社説 環境金融を減速させるな

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 環境金融の勢いに陰りがみえるのが気掛かりだ。環境省のまとめによると、2024年に2兆2169億円(125件)あった国内企業などによるグリーンボンドの発行額は、25年は7月5日時点で7734億円(40件)にとどまる。サステナビリティ・リンク・ローンの組成額も25年は7月9日時点で1971億円(344件)と、24年の5060億円(1058件)を下回りそうだ。
 国際的にも、ここにきてグリーンボンドの発行額には頭打ちの兆しがある。米国のトランプ政権が環境対策を否定する政策を打ち出し、世界的な足並みの乱れも懸念される。ただ、近年の猛暑や頻発する豪雨災害にみられるように温暖化リスクは誰もが実感するレベルにきている。温暖化ガス発生抑制などの取り組みが停滞すれば、さらに危険度が増す。国連は24年10月に、現状のままでは21世紀末に地球の気温は最大で3.1度上昇すると警告した。環境金融をブームで終わらせてはならない。
 環境省の検討会は7月にグリーンファイナンス市場参加者に期待する取り組み事項をまとめた。資金供給者である金融機関には、グリーンボンドなどへの投資や国際原則にのっとった融資のさらなる推進、投融資先の環境対応の適切な評価、質の高い働きかけなどが期待されるとした。
 トランジションボンドやローンで資金調達する企業が増えているほか、サステナブルファイナンス目標を前倒しで達成し、目標を上積みして取り組む金融機関もある。信用金庫業界では、簡易版のサステナビリティ・リンク・ローンを投入し、中小企業の負担を減らしつつ、脱炭素を支援する取り組みが広がっている。過度に悲観する必要はないだろうが、23年2月に閣議決定されたGX実現に向けた基本方針では、50年までのカーボンニュートラル実現に向け、10年間で150兆円の資金が必要とされている。2025.9.5


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