社説 投信販売の停滞が気になる
金融機関の投資信託販売額に一服感がでている。ニッキン投信情報によると、世界的な株価上昇もあって2025年9月末の預かり資産残高は全業態で増加した一方、25年4~9月の販売額は全業態で前年の同じ期間に比べ減少した。地方銀行と第二地方銀行は22%、信用金庫は28%減った。24年1月から新しい少額投資非課税制度(NISA)が始まり、前年の販売が多かった反動はあろうが、ブームに終わらせては、資産運用立国の実現が遠のく。
投信販売額減少の一因とみられるのが、「金利ある世界」が戻り、預金獲得の重要性が高まったことだ。一部では預金獲得競争が激化し、投信の販売まで手が回らないという声も聞かれる。
ただ、金融機関の都合で投信を案内しないようでは顧客本位とは言い難い。足元ではインフレ傾向が強まっている。リスクはあるが、投信を通じて株式や現物資産などに間接的に投資することはインフレ対策としては理にかなっている。環境変化を踏まえた資産形成の提案が重要だ。
NISA口座を使った投資では、インターネットを利用する顧客が多く、対面での接点が少ないだけに、ネットでの情報発信にも工夫が求められる。市場の変化を伝えるだけでなく、年代ごとに異なるニーズを喚起する発信を強めるべきだ。
NISAを巡っては金融庁が26年度税制改正要望で、あらゆる年代層でライフプランに沿った資産形成が可能になるよう、対象年齢や商品の見直しを求めている。全世代の金融リテラシーを高める取り組みも強化したい。
6月末の家計の金融資産は2239兆円。うち半分は現金・預金で、投信は6%に過ぎない。貯蓄から投資への取り組み成果は日本の成長の鍵を握る。高市早苗首相も所信表明で「成長戦略を加速させるためには、金融の力が必要」と述べており、金融機関への期待は大きい。2025.11.21
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