社説 経済最優先でも財政規律は重要
 10月21日、自民党の高市早苗総裁が第104代総理大臣(首相)に就任した。日本で女性の首相が誕生するのは初めて。マスコミ各社の世論調査によると、高い支持率を得ての船出だ。停滞する政治の打破や物価高対策への期待の表れだろう。ただ、今後の政権運営は容易ではない。日本維新の会と連立を組んだが、衆参両院とも過半数に達しない状況は当面続く。政策ごとに野党の協力を得ないと進まない。与野党ともに、国民目線の責任ある議論が求められる。
 高市首相は、経済対策に最優先で取り組む考えを示した。足元で進む物価高への対策は当然必要だが、ガソリンの旧暫定税率廃止や年収の壁の引き上げなどの財源は不透明だ。所信で表明したように、債務残高の伸びを成長率の範囲内に抑えるとしても、残高増が続けば、市場の信認を失いかねない。既に普通国債残高は1100兆円を超えている。
 高市首相は就任会見で金融政策について聞かれ、「日銀が政府と十分に連携を密にして意思疎通を図っていくことが大事」とした。10月4日の自民党総裁就任会見で「金融政策にも政府が責任を持つ」としていた言葉はなかった。日銀の独立性は担保されるべきであり、政治介入は金融市場の混乱要因になり得る。
 金融相には財務相と兼務で片山さつき氏を起用した。自民党の金融調査会長や地域金融議員連盟の会長を務め、金融行政や地域金融機関の置かれた事情に詳しいだけに、金融界から期待もある。
 片山氏は22日の就任会見で、策定に向けて議論が始まった地域金融力強化プランについて、「非常に重視していきたい」と述べた。地方創生担当相の経験もあり、地域を支える地域金融機関の重要性を認識した発言だろう。首相が掲げた地方に投資を呼び込み、地域ごとに産業クラスターを形成する「地域未来戦略」の実現に資する規制見直し、金融行政を進めてもらいたい。2025.10.31
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