社説 実感伴う成長実現が課題
さまざまな出来事があった2025年が間もなく終わる。本紙読者が選んだ金融界10大ニュースの1位は「日経平均株価、初の5万円台乗せ」。4月の「米トランプ大領領、高率の相互関税政策発表」(3位)で、一時下落した株価は、10月の「初の女性首相誕生、高市内閣発足」(2位)を受けて大きく上げた。
高市早苗首相が掲げる積極的な財政政策は株価の押し上げ材料になった一方、債券市場では「参院も与党過半数割れ」(9位)の状況が相まって財政拡張リスクが強く意識され、10月に1.6%台で推移していた長期金利は足元で2%に迫る水準に上昇。金融機関ではリスク管理と有価証券ポートフォリオ再構築の重要性が高まった。
米国の関税政策は金融政策にも影響。日本銀行は1月に「追加利上げを決定」(5位)した後、影響見極めなどを理由に10月まで6会合続けて利上げを見送った。多くの金融機関は1月の利上げを受け、3月に「預金金利を引き上げた」(10位)。マイナス金利解除以降、預金獲得競争は激化しており、安定した預金確保が引き続き課題となる。
「貸金庫からの窃盗容疑で元三菱UFJ銀行員逮捕」(4位)や、「いわき信用組合で巨額不正融資」(7位)など、コンプライアンスやガバナンスの重要性を認識させられるニュースも目立った。金融ビジネスの根幹をなす信用・信頼が揺らぎかねないだけに、すべての金融機関が意識を高め、不祥事撲滅に取り組まなければならない。
政府は米価格が高止まりしていることを受け、3月に「備蓄米の放出を開始」(8位)した。米以外も値上がりが続き、物価変動を考慮した実質賃金は10月まで10カ月連続して前年同月比マイナスを記録。株価や金利は、「失われた30年」を抜け出したが、国民の多くは物価高で成長を実感できておらず、26年は物価上昇を上回る賃上げを実現できるか正念場となる。2025.12.19
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