社説 地域金融力高める幅広な議論を
9月から金融審議会の地域金融力強化ワーキング・グループの議論が始まった。公的資金制度や資金交付制度だけでなく、諮問文にあるように趨勢(すうせい)的な人口減少や、その他の環境変化のなかで、地域金融機関が地域経済に貢献する役割を十分に発揮できるようにするために必要な方策を幅広に議論してもらいたい。
合併や経営統合が地域金融力強化の選択肢の一つであることは言うまでもない。2026年3月末が申請期限となっている合併・経営統合する地域金融機関に預金保険機構から最大30億円を資金交付する制度の期限延長や限度額引き上げが実現すれば、地域金融機関の助けになろう。信用金庫・信用組合業界が求める合併・経営統合を伴わないシステム統合などを交付対象とすることも銀行と協同組織の違いを考えれば、検討の余地はある。
全国地方銀行協会は、円滑な事業承継支援へ不動産仲介業務の部分的解禁や、地域課題の解決へ銀行持ち株会社から一般持ち株会社へ柔軟に移行できるルールの創設などを要望している。
一般持ち株会社への柔軟な移行には、他業リスクや利益相反、銀行の産業支配などの課題がある。一方で、銀行業も抱える事業会社が地域の核として活動すれば、課題解決支援の柔軟さが増す。例えば、廃業する中小企業を束ねて傘下にし、成長を目指せる企業に変えていくような支援も見通せる。
業界団体の要望に対し、現行規制のなかで、十分な取り組みが行われているかを問う声や、地域金融力という言葉があいまいで、議論しにくいという意見も出ている。
公的資金制度などを優先して議論し、一区切りつけた後に業務範囲規制の見直しなどは時間をかけて議論してもいいだろう。人口減少は避けられない。人材などリソース不足も深刻だ。地域金融機関が行える支援の選択肢を増やす意義はある。2025.10.17
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