ニッキン抄 2023.11.3
昨今の経済学では、データを用いて個人や企業の行動を読み解く実証分析の成果が著しい。米ハーバード大のラジ・チェティ教授はこの分野のスター的存在だ▼従来は公的統計や行政記録情報の活用が主流だったが、最新の研究では民間企業の提供データを使った。クレジットカードなどの匿名化された日次情報を複数社から集め、コロナ下の経済状況をリアルタイムで把握できるデータベースを構築。その分析結果はバイデン政権が現金給付に所得制限を設ける客観的根拠となった▼こうした研究は豊富なデータの存在が前提条件となる。出遅れる日本では公的統計でさえ有効回答率の低下に悩む。約20年前は80％台だった雇用動向調査は昨年58％に落ちた。中央省庁で相次いだ統計不正への不信が尾を引く▼人が数字を偽らない限り、数字は嘘をつかない。金融機関が日々生成する膨大なデータは社会をよりよくする可能性を秘めている。2023.11.3
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