ニッキン抄 2024.3.29
相撲界の隠語で美しい女性を「金星」と呼ぶ。本来の意味は平幕力士が横綱に勝つこと。大相撲の本場所で同部屋対戦は組まれないから、今の一人横綱、照ノ富士の弟弟子に金星の機会はない。その一人、尊富士が110年ぶりの新入幕優勝という世紀の大金星（手柄）を挙げた。暴力問題で揺れる角界には望外の熱狂だろう▼元幕内北青鵬の暴行が表面化する前の昨年8月、渦中の宮城野親方（元横綱白鵬）の講演を日本産業精神保健学会で聞いた。「22歳で綱取りの夢がかない目標を失った」。だから「夢は大小織り交ぜ、たくさん持った方がいい」と▼力士の「かわいがり」は稽古（けいこ）でのしごき。この隠語によって後輩や付き人へのいじめが看過されてきた面は否めない。去年の新弟子検査の合格者は史上最少の53人。力士数は45年ぶりに600人を割った▼夢のない職場に人は集まらず定着もしない。来週から新年度。新入社員を迎える桜の季節が来る。2024.3.29
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