ニッキン抄 2024.5.31
星新一さんの短編小説「生活維持省」はぞっとする筋書きだ。増え続ける人口の抑制へ同省の役人が毎日、ランダムに選ばれた市民を射殺する。争いの無いユートピア実現に残酷さはつき物――そう表現したかったのか▼人口減に超高齢化。星さんの予言とは逆に進む現代日本。ただ、リアルな政府も国民の安定した“生活維持”にやむを得ない判断を下しそうだ。「高齢者の定義」を65歳から70歳に引き上げる議論を進めるという。年金支給の後ろ倒しが透けて見える▼財政危機という国難への対処に理解できなくはない。元気なアクティブシニアも増えた。人手不足で高齢者就労の重要性も分かる。とは言え、年金支給年齢の引き上げには「老後の生活設計が狂う」「健康で働き続けられるか」など不安の声が広がる▼それだけに政府は国民の理解が得られるよう丁寧に説明してほしい。間違っても先の役人のように“問答無用で”とならぬよう。2024.5.31
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