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社説 ポートフォリオの再点検を

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 農林中央金庫が1兆2千億円規模の資本増強を系統内で協議していることが明らかになった。欧米の急速な金利上昇に伴って、保有する外国債券に多額の含み損が生じた。国内外の金融環境は大きな転換期にあり、各金融機関は運用戦略やポートフォリオの構成を再点検すべきだろう。  金融取引でリターンを得るには、必ず何かしらのリスクを負う必要がある。農林中金の場合は、外債偏重型のポートフォリオだった。債券投資は金利上昇局面に弱く、保有債券が値下がりする。米国の利上げが想定を上回ったことから、3月末の債券の含み損は2兆円超に膨らんだ。  今回の資本増強で投資余力を生み、低利回りの資産を売却して収益性の高い資産に再投資するという。そのため、今期の純損益は約5千億円の赤字を見込む。含み損を抱えた有価証券を“塩漬け”にせず、早期の“損切り”によってポートフォリオを組み直すという決断は、評価に値する。  米国の利上げ局面は転換期を迎えており、高利回りの米国債を新たに購入すれば、今後の利下げ局面では値上がり益を期待できる。ただ、引き続き外債偏重型の運用を継続するのか、今回の教訓を生かして他の資産クラスへの分散投資を進めるのかについては検討の余地があろう。今後の動向を注視したい。  系統内で資本を調達できるのは協同組織金融機関の強みといえる。中小事業者を主な会員とする信用金庫・信用組合と、農林漁業者を主な会員とするJAバンクはリーマン・ショックの際、いずれも中央機関が会員金融機関から資本を集め危機を乗り切った。  有価証券運用の損失を穴埋めするための増資は、会員からの風当たりが強くなりがちだが、相互補完の関係だけに理解は得やすい。その信頼関係を維持するためにも、増資の意図を丁寧に説明したうえで、運用の果実を会員に分配するという本来の役割をしっかり果たす必要がある。2024.5.31


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