ニッキン抄 2024.6.21
出版不況と言われて久しい。雑誌の数は直近ピークの2005年(4581点)からほぼ半減した。終戦直後にも、輪をかけてひどい不況があった。各種統制が解除されて創刊が相次ぎ、1947年に雑誌数は7249点に急増したが、数年で約5分の1に淘汰された▼当時、闇市ではカストリ焼酎が流通していた。「3合飲むと酔いつぶれる」という粗悪な密造酒だった。創刊から3号前後でつぶれる娯楽誌は俗に「カストリ雑誌」と呼ばれた▼48年創刊の「暮しの手帖」も1号、2号と赤字が続き、3号を出せなくなった。創業者の大橋鎭子(しずこ)は銀行を紹介してもらおうと、かつて勤めた日本興業銀行に出向いた。入り口で偶然会った同期に訳を話すと、同期3人が自分の退職金を担保に興銀から30万円を借りてくれた▼それで廃刊を免れ、天才編集者・花森安治を擁する名物雑誌が世に残った。善意のお金には悪酔いしない美酒を育てる力がある。2024.6.21
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