ニッキン抄
新潟港を出港して1時間。フェリーの甲板で太宰治は眼前の光景に混乱する。岸に近づくも通り過ぎ、しばらくして巨大な内陸が。最初の島は「満州……まさか。能登半島かも知れぬ」。紀行文「佐渡」にあるシーンだ▼佐渡が二つの島で成るのを知らず、慌てる様子を面白く描いている。文豪みたいに驚くかはともかく、初上陸する観光客は増えよう。佐渡金山が世界文化遺産登録された。島民にとって長年の悲願である▼手工業による金銀生産の歴史的価値が認められた。平成元年の閉山までの約400年で金78トン、銀2330トンを産出。人々が競って掘り進めた結果、山が縦にパックリと割れた「道遊(どうゆう)の割戸(わりと)」は見応え十分。インバウンド喚起も期待される▼が、一時の観光ブームにしてはならない。島の活性化へ豊かな自然やトキ、歴史・文化という観光資源をいかに磨き、魅力の“粒度”を高めるか。先人達が丁寧に採掘したごとく。2024.8.9
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