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社説 追加利上げは金利交渉の号砲

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  日本銀行は7月31日、政策金利を0.25%に引き上げる追加利上げを決めた。それに伴い、銀行界では短期プライムレート引き上げの発表が相次いでいる。17年ぶり短プラ引き上げは、貸出業務を行う金融機関が融資先との利上げ交渉を開始する号砲となる。
 利上げは中長期的にみれば金融機関収益にプラスに働く。その一方で収益を生み出す源泉となる預金の獲得競争は激しさを増すだろう。短期的な株価の急変動や円建て債券の含み損益悪化など市場リスクへの備えも必要となる。
 利上げ後の株価下落は、円キャリートレードの巻き戻しが一因とされる。海外と日本の金利差を背景に、円建てで資金を借り入れ、その円資金を外貨に転換し運用してきた取引が足元で転換。米国の利下げ観測の高まりが重なり、急速な円高・株安が進んだ。マイナス金利政策の長期化が生んだ副作用といえる。
 今回の利上げ幅は通常よりも少ない0.15%であり、利上げ後の金利水準も超低金利の域を脱していない。それでも、金融機関に行動変容を迫る分岐点となるだろう。
 なかでも取引企業との利上げ交渉は最大の課題となる。各金融機関は社内研修やマニュアル整備などで準備を進めてきたが、営業現場にはかつての利上げ局面を経験した行職員が少ない。そのため、短プラなどの市場金利に連動する貸出金利を適用している融資先に対しても、丁寧な説明を行う意向を示す金融機関が多い。その他の企業に対しても丁寧かつ速やかな交渉を行い、貸出金利の引き上げを粛々と進めていく必要がある。
 日銀の次の利上げは0.5%への引き上げがメインシナリオ。いつ実現するかは今後の内外データや経済動向によるが、日本経済の強さが試されることになる。継続的に金利が上がっていく景気循環を生み出すためには、個々の企業を地道に支えるという金融本来の役割に徹するしかない。2024.8.9


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