社説 健全性も意識しETF売却を
日本銀行が異次元金融緩和の一環で購入した上場投資信託(ETF)の売却を始めることを決めた。日銀が大量にETFを保有し続けることには株価形成やガバナンス(企業統治)上の問題点が指摘されており、売却決定は当然だ。決定が発表された9月19日午後にはサプライズ感もあって、株価が下落する場面はあったものの、長期間かけて少しずつ売却していく姿勢が理解され、大きな混乱には至らなかった。引き続き市場の動向に細心の注意を払いつつ、売却を進め、金融政策の正常化に努めてもらいたい。
日銀は2010年10月の政策決定会合でETFの買い入れを決定。25年3月末時点の保有額は簿価で約37兆円(時価約70兆円)に達する。これを簿価で年3300億円(時価6200億円)程度のペースで売却していくとした。市場の売買代金に占める割合は0.05%程度を見込む。売却を終えるまでには、単純計算で100年以上かかる。
市場に配慮し、慎重に判断したことは理解できる。ただ、歪(ゆが)んだ株価形成につながるなど日銀が大量のETFを保有する弊害は少なくない。リスクも高く、100年以上持ち続けることを健全とは言い難い。経済情勢や株式市場の動向をみながら、売却額や売却方法を見直す必要はあろう。
日銀はマイナス金利政策を24年3月に解除し、国債買い入れも縮小している。ETF売却決定で、異次元金融緩和でとられた主要施策が出口に向かって動き出す。今後は、そのペースが重要になる。
9月の政策決定会合では5会合連続で金利が据え置かれたが、2人の審議委員が利上げを提案した。会見で植田和男総裁が、消費者物価の総合指数が数年間にわたって2%を超え、「国民の皆さんは日銀の対応が遅れているという感じを持っていると思う」と述べたように、消費者の実感とのズレは気になる。「物価の番人」として国民に分かりやすい説明が求められる。2025.10.3
ニッキンのお申し込み
ご購読のお申し込みは、インターネット・FAXで受付けしております。
申込用紙をFAX(03-3237-8124)またはお近くのニッキン支社・局までお送りください。