社説 民営化法20年の検証必要
2005年10月に郵政民営化法が公布されてから間もなく20年になる。当初掲げられた国民の利便性向上や経済活性化につながる資金循環、金融界が求めるイコールフッティングの実現は道半ばだ。急速に人口減少が進むなか、地方の行政サービスなどを維持していくうえで、全国に約2万4千局ある郵便局ネットワークの利活用は大きな鍵になる。自民、公明、国民民主の3党が今年の通常国会に提出した改正法案は継続審議となったが、縮む将来を見据えて、しっかり議論し、今後のあり方を示すべきだ。
民営化法は07年10月に施行され、日本郵政傘下に4社がぶらさがる形でスタート。12年5月に郵便局会社と郵便事業会社を統合し、現在の体制になり、15年11月に日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の3社が上場した。
会社形態の民営化は進んだものの、当初法で義務付けられていた17年9月までの金融2社株の完全売却は、民主党連立政権下の12年に「できる限り早期に」に修正された。さらに、継続審議になった改正法案では、「できる限り早期に」の文言を削除するとされている。低収益の郵便事業を金融2社の収益でカバーする構造を変えられていないところに問題がある。
人口減少で各自治体とも従来通りの行政サービスが難しくなっている。改正法案に盛り込まれた自治体の窓口業務代行を日本郵便の本来業務に加えることは一案だが、郵便局網維持に年約650億円を拠出するとされており、経済合理性があるかは疑問だ。
郵政グループでは保険の不正販売や、飲酒運転問題など大きな不祥事が相次いだ。巨大組織ゆえのガバナンスの弱さが指摘される。政治の関与が強く、民間から招いたトップが十分能力を発揮できなかった面もある。20年間を多面的に検証し、国民の生活向上や日本経済の成長に貢献できる組織に進化させなければならない。2025.9.26
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