ニッキン抄 2024.9.20
人嫌いだった永井荷風は見知らぬ者が訪ねてくると、「先生はお留守です」と追い返した。もっと大胆なのは夏目漱石。居留守を使い、相手が疑っていると玄関まで行き「いない者はいないんだ。私が言うのだから確かだ」と言い放った▼戸板康二氏の「新々ちょっといい話」にある大家2氏の逸話だ。日々、編集者やファンらが押しかけていたのだろう。一方、こちらは撃退すべき当世の来訪者である▼高齢者を狙う悪質な販売業者が増えている。屋根修理のほか、最近多いのが給湯器の交換。ガス点検を装い、高額の工事代を取る。2023年度は東京都内で相談件数が22年度の10倍を超えた。屋根に上る修繕業者、工事車両……。高齢者宅を訪ねる渉外の方も普段と違う光景に異変を感じたら、ためらわず声かけを▼一部自治体では「居留守」を勧めるステッカーを作った。高齢者が文豪のごとく情け無用で対処する一助になればいい。2024.9.20
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