社説 “指針改定”機にM&A支援強化を
中小企業庁は8月30日、後継者のいない中小企業やM&A(合併・買収)仲介事業者を対象とした「中小M&Aガイドライン(指針)」を改定した。仲介事業者に対し、あらかじめ手数料の開示を求めることが柱だ。その対象には金融機関も含まれており、中小企業の経営者がM&Aに抱く不信感が払拭(ふっしょく)されて、信頼感の醸成につながることを期待したい。
中企庁は2020年に同指針を策定し、その翌年に5カ年の「中小M&A推進計画」を公表した。中小企業のM&A件数は年間3千~4千件程度だが、潜在的な譲渡ニーズは60万社と桁違いに多いためだ。21年8月には、同計画に基づき「M&A支援機関登録制度」が創設された。登録機関は指針の順守を宣言する必要がある。金融機関では、銀行や信用金庫・信用組合、証券会社など163機関が登録している。
中企庁の特設サイトに掲載された登録支援機関データベースで、各社の手数料を見ることができる。最低手数料や報酬率などの設定水準はまちまちで、簡単に比較検討できるようになった意義は大きい。手数料を開示しない仲介事業者は登録の取り消し対象となり、政府が支給する事業承継・引継ぎ補助金の対象から外れる。
近年、金融機関はコンサルティング営業の一環として、取引先企業のM&A支援に力を入れている。専門業者との連携に軸足を置く金融機関が多かったが、最近は自力での取り組みを本格化させるところも増えてきた。
M&A業務は、地元企業の事業を絶やさず雇用を守るという社会的意義に加え、自社の収益への貢献も少なくない。今回の手数料開示を契機に業務の透明性を一層高め、潜在ニーズを喚起すべきだろう。手間と時間と専門知識を要する業務だが、後継者不足に伴う事業承継問題は待ったなしの状況であり、金融機関が果たせる役割は大きい。2024.9.20
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