社説 商工中金は適正な競争と連携を
大規模な不正に端を発した商工組合中央金庫改革に大きな区切りがついた。6月12日までに政府保有株式はゼロになり、改正商工中金法が13日、施行された。不正の原因になった危機対応融資業務は残されたものの、出資規制の緩和など民間銀行並みの業務が可能になった。ただ、法が定める使命は「中小企業組合や中小企業者の金融円滑化」であり、以前と変わりない。これを忘れず、商工中金ならではの機能を磨いてもらいたい。
法改正の発端は、危機対応融資業務で民間金融機関の業務を圧迫する全店的な不正が2016年に発覚したことだ。改正法施行に合わせ、商工中金は適正な競争関係を維持するため、民間金融団体と新たな協議の場を設ける。不正が発覚して以降、是正が進み個別に金融機関と連携・提携する例は増えている。商工中金が持つノウハウや資金力に対して民間金融機関が期待する部分はある。さまざまな課題を抱える中小企業を支援していくには、適切な競争と連携が重要だ。例えば事業再生支援に協力して取り組めば、ノウハウを共有でき、支援力の底上げにつながる。
業務範囲の拡大に合わせて、商工中金は地域商社の創設などを検討している。地域商社を設立した地域金融機関は少なくないだけに、どう特色を出して縮む地方経済を支えていくのかが問われる。
政府保有株式はゼロになったとはいえ、入札は順調に進まなかった。結果、政府保有分の9割近く(発行済み株式総数の約41%)を商工中金が取得することになった。株主構成は、いびつと言わざるを得ず、どう解消していくかも課題だ。取引先に保有してもらうには、商工中金自身が企業価値を高める必要がある。一方で、完全民営化を意識するあまり、収益偏重に走り、民業を圧迫するようなことがあれば、再び社会の批判を浴びることになろう。これまで以上に高いガバナンスやコンプラインス意識が求められる。2025.6.20
ニッキンのお申し込み
ご購読のお申し込みは、インターネット・FAXで受付けしております。
申込用紙をFAX(03-3237-8124)またはお近くのニッキン支社・局までお送りください。