社説 新担保権、腰据えて取り組め
企業価値担保権の創設を柱とする事業性融資推進法が、5月25日に施行される。企業が将来生み出すキャッシュフローを見積もり、ブランドなど無形資産を含めて一体で担保にできるようになる。不動産担保が主流の日本にはなかった考え方だけに、事業者の理解を得ながら、腰を据えて取り組んでもらいたい。実績を競い合う制度ではない。
帝国データバンクが2025年12月~26年1月に行った調査によると企業価値担保権を「知っている」と回答した経営者は50.5%で、半数はまだ「知らない」状態だ。「知っている」とした経営者も、「制度の内容を含めてよく知っている」との回答は、わずか1.7%で、まずは官民で制度の周知に取り組む必要がある。
これまでの融資慣行とは異なる部分があり、金融機関も実務の面で、戸惑う点は少なくないだろう。企業価値担保権という名称から、新しい担保と考えがちだが、制度創設の趣旨は、借り手と貸し手の間に存在する情報の非対称性をなくし、長いリレーションの中で企業価値向上を一緒に目指すところにある。
長期に及んだ低金利時代に陥った「借りてください営業」や画一的な「格付け主義」を見直し、融資の原点である企業を理解し育てる姿勢への回帰を促すものともいえる。
新担保権は、不動産担保が少ないスタートアップに限らず、さまざまな活用例・効果が期待される。
事業譲渡によるスポンサー型の再生支援なども企業の価値を把握している金融機関が主導しやすくなる。経営者保証を原則つけない企業価値担保権が設定されていれば、事業承継もスムーズになる可能性がある。1行取引が進むことを危惧する向きもあるが、シンジケートローンでの活用も想定される。
金融機関それぞれが、試行錯誤しながら、金融界全体で有益な活用方法を見いだしてもらいたい。2026.5.22
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