社説 長期不正の代償は大きい
いわき信用組合(福島県)の迂回(うかい)融資問題などを調査していた第三者委員会が5月30日、調査結果を公表した。大口融資先の不良債権化を隠すため、借名口座を使うなどして約20年間にわたり、融資と返済を繰り返していた。不正に融資された金額は少なくとも247億円とされた。横領・着服の隠蔽(いんぺい)も行われており、極めて悪質だ。信頼回復には時間を要するだろう。不正の代償は大きい。
一連の不祥事の背景には、2004年からトップに君臨し続けた江尻次郎前理事長・会長に権限が集中したことがある。誰も逆らえない組織となり、20年以上も不正が続けられた。ガバナンスや内部監査が機能不全に陥っていたことは明らかだ。検査・監督する金融庁にも責任がないとは言えない。
少なくない役職員が不正に関与しながら、声を上げなかったことも根深い問題だ。長期間、不正が繰り返されるなかで、不正を不正で隠す組織風土が出来上がってしまった。第三者委の調査にも当初は非協力的だったとされる。
今回、不祥事が発覚したのは元職員によるX(旧ツイッター)への投稿だった。不正の長期化を防ぐには、外部窓口の設置など実効性ある内部通報制度を整備することは欠かせない。誰かに通報されると意識させれば、不正の抑止につながる。
折しも今国会で通報者の保護を拡充する改正公益通報者保護法が成立する見通しだ。いまだに通報者を冷遇し、報復する対応がみられる。社会全体で内部通報への意識を変える必要がある。とりわけ信用を第一とする金融機関の職員は、不正の黙認は許されないと心得るべきだ。
今後、いわき信組は理事長をはじめ、理事・監事7人が辞任し、新体制で正常化を図る。顧客の不信感は相当だろう。まずは顧客に謝罪し、膿を出し切ることが第一歩だ。第三者委も全容を解明できなかったとしている。2025.6.6
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