社説 ドコモ参入、競争でサービス磨け
NTTドコモが住信SBIネット銀行を買収し、銀行業に参入すると表明した。これにより主要な通信キャリア4グループすべてが銀行業を手掛けることになる。スマートフォンの世帯普及率は9割に達し、それを軸にポイントや携帯電話以外のサービスを組み合わせて顧客を囲い込む動きは激しい。既存の金融機関にとってもリテール分野の脅威が増す。各金融機関は自らのサービスに磨きをかけ、競争力を高めることが重要だ。
通信キャリア系のauじぶん銀行、PayPay銀行、楽天銀行に住信SBIネット銀を加えた4行の2025年3月末預金残高合計は27兆円を超える。融資残高も20兆円に迫り、預貸両面で存在感を高めている。
その強みの一つは、ポイントサービスだ。ネット通販なども手掛けており、ポイント還元だけでなく、利用できるシーンを多く用意し、互換性・汎用(はんよう)性が高い。
メガバンクグループでも、三井住友フィナンシャルグループ(FG)が個人向け総合金融サービス「オリーブ」を核にVポイント経済圏を広げている。三菱UFJFGも新たなポイント戦略を打ち出した。ただ、ポイント経済圏競争は大手に収れんしつつあり、他の金融機関が割って入るのは容易ではない。
通信系に限らずネット銀はアプリの操作性に対する評価も高い。伝統的金融機関は利用者目線でインターネットバンキングやアプリの使い勝手を改善していかないと、差が広がる。金融系アプリの実態調査を行っているアイリッジは「安易に多機能化したり、複数機能の利用を促すだけでは、必ずしも利用頻度や機会は高まらない」と指摘する。
有人店舗を活用したリアルとデジタルの融合は、伝統的金融機関の強みになろう。資産運用や相続などについて誰かに相談したいというニーズは年代を問わずある。長年蓄積した取引データも活用方法次第で武器にできる。2025.6.13
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