ニッキン抄 2024.9.27
将棋会館の移転に伴い、旧会館が9月23日に閉館した。その1階のグッズ売り場には、壁一面に歴代棋士が揮毫(きごう)した扇子が飾られていた。「智勇」「飛翔」などの大書が多いなか、異色だったのが「助からないと思っても助かっている」。大山康晴十五世名人の座右の銘である▼同郷で倉敷紡績社長だった大原総一郎が陶芸家の河井寛次郎に依頼してこの一節を焼き付けた陶板を作り、大山に送った。多様な解釈が可能だが、人は悩んだり苦しむ時間を与えられている時点で既に救われている、という示唆だろう▼大山は終盤劣勢でも「助かっている」と思い直し盤上を眺めるとたびたび妙手が浮かんだという。その名人は旧会館の建設委員長も務め、寄付集めに奔走した▼時代は移り、日本将棋連盟は新会館建設にクラウドファンディングを活用。目標額6億円に対し約9億4千万円が集まった。将棋ファンの新たな聖地は10月1日にお目見えする。2024.9.27
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