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社説、不透明な海外リスクに備えよ

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 国際金融市場がグローバル経済の不安定化リスクに揺れている。トルコリラの急落が他の新興国や欧州系銀行に波及し、実体経済を冷え込ませることが懸念されているためだ。加えて、米国と中国が互いに追加関税を発動し合う貿易戦争が一段と激化する恐れもある。国内金融機関は不透明さを増す海外情勢が悪化した場合への備えを万全にしておく必要がある。
 邦銀のトルコへの与信額は3メガバンクを中心に2018年3月末で1兆円程度。大半が現地銀行向けで不良債権比率も低く、影響は限定的とみられる。心配されるのは多額の経常赤字を抱え、米国の利上げで通貨安が進みやすい新興各国への危機の伝(でん)播(ぱ)だ。海外部門の収益比率が高まっている大手銀行はもとより、地域銀行も外国有価証券運用や取引先の新興国ビジネスが広がっているだけに、各国の変化の予兆を把握するモニタリング体制の強化が急がれる。
 「トルコショック」が同国への与信比率の高い欧州系銀行の経営悪化を招く可能性も指摘されている。スペインの大手銀BBVAは利益の10%超をトルコ事業に依存している。欧州債務危機が再燃しないとも限らない。国際金融市場で想定されるリスクの一つと捉え、銀行間の信用度合いを反映するインターバンク金利など市場の動向に十分注意が必要だ。
 米中による貿易戦争がエスカレートすれば、その影響は計り知れない。トランプ政権が輸入車への関税を大幅に引き上げるとなれば日本経済にも相当なダメージを及ぼす。国際通貨基金(IMF)は世界成長率予想について18、19年とも3.9%の高水準を維持するが、20年以降は鈍化するとの見方を示す。貿易摩擦の先鋭化は世界経済の失速につながりかねない。
 折しも今年9月にはリーマン・ショックから10年を迎える。国際金融危機の教訓から生まれたのが、あらゆる経済環境に備えたストレステスト。新興国リスクや地政学リスクなどグローバル環境の不安定要因が多様化する今、さまざまなシナリオを分析し金融システムの持続的安定に生かすことが大事だ。2018.8.31


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