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社説 懸念される財政拡張リスク

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 7月20日に投開票が行われた参院選で、自民・公明の与党は大きく議席を減らし、衆院に続き過半数を割り込んだ。石破茂首相は辞任しない意向を表明し、政策ごとの協力を訴えたが、政権の不安定さは増す。金融市場に及ぼす影響にも注意が必要だ。積極財政を唱える野党の勢いが強まれば、財政拡張リスクへの意識が一段と高まり、超長期を中心に金利上昇が続く可能性がある。
 今回の参院選では、物価高対策が争点になり、多くの野党は消費税の減税を唱えた。一方、自民党は消費税が社会保障の財源とされていることを踏まえ、引き下げは適さないとの方針から、給付金を打ち出した。ただ、与野党ともに、その財源をどう確保するかについては、あいまいさが拭えず、債券市場では財政悪化懸念から、7月15日には10年もの国債利回りが一時1.595%まで上昇、17年ぶりの水準になった。
 物価高対策の必要性は否定しないが、消費減税するにしろ、給付金を支給するにしろ、財源と将来の財政運営のあり方は明確に示す必要がある。複数の党が財源として挙げた税収の上振れについても、米国の追加関税が通告通り8月1日から発動されれば、企業業績が落ち込み、想定通り増えない恐れがでてくる。
 2022年9月、英国のトラス政権(当時)が打ち出した大型減税策は、“財源なき減税”とみなされ、ポンド安、債券安、株安のトリプル安を招いた。日本国債は9割近くが国内で保有されており、英国と事情は違うとはいえ、日本銀行が国債購入額を減らしていくなかで、財源を国債の増発に求めるならば、国の信認低下を伴う悪い金利上昇を招く危うさがある。
 20年に対GDP(国内総生産)比で250%を超えた債務残高比率は若干の低下はみられるものの、依然として先進国では突出して高いだけに、長期的な視点も合わせた政策論議が求められる。2025.7.25


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