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社説 出向者に依存しない保険販売を

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 三菱UFJ銀行に出向していた日本生命保険の社員が、同行の保険販売に関する情報を持ち出し、営業活動に利用していたことが明らかになった。銀行に出向していた損害保険会社の社員も類似の不祥事を起こしている。生損保とも多くの会社が、出向者引き揚げに動いているが、引き揚げに終わらせず、保険会社と金融機関が協力して顧客の最善の利益につながる適切な関係を構築する機会にしたい。
 中古車販売大手のビッグモーターによる保険金水増し請求に端を発し、5月末に大型代理店の規制強化などを盛り込んだ改正保険業法が成立(施行は1年以内)。保険会社向けの監督指針も改正され、役務の提供など代理店への過度な便宜供与は禁止される。
 もともと保険会社は代理店が適切に業務を遂行するよう指導する責任を負っているものの、商品を販売してもらう立場にあり、あやふやになりやすい面があったことは否めない。代理店が複数の保険会社の商品を取り扱っている場合、自社の保険商品を多く販売してもらうため、さまざまな便宜を働く動機を生む。
 出向先情報の持ち出しも、自社商品の販売を有利にしたい思いがあったとみられる。より深刻なのは持ち出した情報が社内で共有されていた点だ。組織としてコンプライアンス意識を欠いており、早急な改善が求められる。
 金融機関も保険会社からの出向者に依存しない販売体制を急ぐ必要がある。営業や研修、事務処理などで保険会社の支援を得て、業務を回している金融機関は少なくないが、協力度合いの大小が販売商品に影響を与えかねない危うさはある。
 保険人材の育成には時間がかかるとはいえ、2007年12月に銀行に保険窓販が全面解禁されてから既に17年以上経過しており、可能な限り内製化を進めるべきだ。出向者なしに対応できないようであればいったん、保険業務を縮小することも考えられる。2025.8.15


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