社説 関税交渉合意でも気は抜けない
4月から続いていた日米関税交渉が7月22日、一応の決着をみた。米国が8月1日から日本からの輸入品に課すとしていた25%の相互関税は15%に引き下げることで合意した。税率が下がったことで安堵(あんど)の空気が漂うが、トランプ大統領就任前と比べ税率が上がることに変わりはない。影響を強く受ける事業者もでてくる。金融機関は気を抜かず支援を続けてもらいたい。
通告より税率が下がったことは、政府の努力の成果だ。25%の関税が課されていた自動車も従来の税率と合わせて15%にすることで合意した。裾野が広い自動車産業の打撃を抑えられた意義は大きい。
ただ、品目ごとに上昇幅は異なり、0%だった税率が15%になるケースもある。金融機関は影響度合いが事業者ごとに違うことを踏まえて、業況を丁寧に聞き取り、必要に応じて支援していくことが重要だ。
政府が4月に全国1千カ所に設置した相談窓口には7月4日までに1400件を超える資金繰り相談が寄せられ、日を追って増える傾向にある。
政府も気を抜かず、上乗せされた関税撤廃に向け努力を続けてもらいたい。国際貿易ルールを無視したような米国の主張は、そもそも容認されるべきではない。
気になるのは、合意のポイントとなったとされる5500億ドル(約80兆円)の対米投資だ。石破茂首相は、日本企業が関与する医薬品、半導体などの重要分野で対米投資の促進のため、最大5500億ドル規模の出資、融資、融資保証を提供可能にするものだと説明した。
一方、トランプ大統領は、SNSに「日本は米国に5500億ドルを投資し、利益の90%を受け取る」と投稿。互いに認識のズレがあるようにも見える。仮に大統領の思い描く通り、投資が増えなければ、そこを突いて再度、税率の引き上げを求めてくることも予想される。2025.8.1
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