ニッキン抄 2025.8.1
「まだ頑張らんとならんがか」――。地震と豪雨に見舞われた能登を描いた映画「生きがい」で主人公が吐き出す言葉だ。監督の宮本亞門氏が能登でのボランティア中に書き留めた地元の人の声だという。生きがいをなくしても生き続ける意味を問うようで重く響いた▼映画の全国公開前に「運のいいことに能登で地震があった」と発言した政治家がいた。真意はほかにあったにせよ、被災者が心を痛めたと思うとやりきれない▼石川県内に仮設住宅での生活を余儀なくされている人はいまだに約2万人。私事で恐縮だが、地震直後から金沢で避難生活を続ける両親に今の生きがいを問うと「ない」と小さい声が返ってきた。それでも行きつけの理髪店ができたり、スーパーの特売に出かけたりしているという▼ある調査で日常のささやかな幸せを感じた時も生きがいの瞬間とあった。少しほっとした。これからも震災の現実を風化させず、早く能登に日常が戻ってくるよう祈りたい。2025.8.1
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