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社説 早期警戒制度は適切な運用を

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 金融庁は4月3日、早期警戒制度の見直しを柱とする中小・地域金融機関向け監督指針改正案を公表した。収益力低下が続くことが懸念される地域金融機関に対し、業務改善命令も活用し、早めの改善を促すのが狙いだ。個別金融機関の経営悪化が金融システムの安定に影響しかねないことを考えれば、もっともな措置と言える。ただ、一方的に効率化や経営統合を迫るような運用には注意すべきだ。現在の地域金融機関の収益力低下は低金利環境の長期化や人口減少など、複合的な要因があり、納得感ある運用を求めたい。
 金融庁は以前から、対話のなかで地域銀行を中心にビジネスモデルの持続性に疑問を投げかけてきた。今回の改正案は、低収益金融機関にビジネスモデルの変革を求めることを制度上明確化するものだ。金融庁の地域金融機関に対する強い危機感の表れとも受け取れる。
 現状、地域金融機関の収益性に厳しさが漂うことは否定できない。日本銀行が4月17日に金融システムレポートで示した中長期収益シミュレーション(貸出需要減少ケース)では、10年後に国内基準行の6割が赤字になると試算された。だが、試算結果は前提条件の置き方で変わる。一方的な試算結果の押し付けは控えるべきだ。
 金融庁は制度の運用にあたり、地域生産性向上支援チームの知見を生かすとしている。個々に異なる地域の経済事情を踏まえ、持続可能性を高める改善策を金融機関と検討していくことは重要だ。地域の将来像をどう描くかによって、必要なビジネスモデルも変わってくる。
 収益性改善へ即効性のある店舗統廃合など経費削減策も、地域経済を支える金融機関の役割を極端に低下させないように注意が必要だ。存在意義が揺らげば持続性は高まらない。
 新たな早期警戒制度に将来的な危機の芽を摘む効果は期待できようが、明確に自己資本比率を基準とする早期是正措置に比べ、金融庁に裁量の余地がある。業務改善命令が独り歩きし、金融機関の信用不安につながる恐れもあるだけに、運用には慎重さが欠かせない。2019.4.26


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