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社説 利上げ加速で外債運用に試練

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 米国など海外の中央銀行による急速な利上げで、地域銀行の外国債券運用が厳しさを増している。保有する外債の評価損が拡大するだけでなく、外貨調達コスト上昇による「逆ざや」のリスクも高まっているためだ。損失が多額になれば経営を圧迫し、金融仲介機能をも損ないかねない。今後、損切りなど機動的な対応を講じ、かじ取りの難しい局面を乗り切れるか。地域銀は運用の巧拙が問われる。
 地域銀では2022年4~6月期決算で、外国債券など「その他有価証券」の評価益が同年3月末比で約1兆4千億円分目減り。44行で含み損となった。背景にはインフレ抑制に向けた主要中銀の相次ぐ利上げがある。
 米FRB(連邦準備制度理事会)は9月も通常の3倍となる大幅利上げを決定。フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を3.0~3.25%とした。問題は、地域銀が米国債運用の元手の外貨調達をFF金利と連動する短期金融市場に大きく依存している点だ。このため「逆ざやが生じ、資金利益に将来にわたりマイナス影響を及ぼす」(アナリスト)恐れがある。
 各行は、含み損と逆ざや見通しの両面を考慮して対応する必要があろう。含み損が自己資本比率に影響する国際基準行では損失処理に踏み切る銀行が出ているが、まだ少数派だ。本業や非金利収入、政策保有株による益出し余力などにもよるだろうが、先手を打って対応することが求められる。実質無利子・無担保のゼロゼロ融資の返済が始まる取引先を支えるためにも、さらなる市場急変に備えたい。
 また、今回のハイペース利上げを教訓に、外債を含む有価証券の運用体制を検証してもらいたい。自社のビジネスモデルを踏まえて最適な資本配分を図る「リスク・アペタイト・フレームワーク」の活用は重要だろう。金融庁・日本銀行もリスク管理の実効性などについて金融機関との対話を一段と深めてほしい。2022.9.30


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