社説 米・関税の影響見定め取引先支援を
米トランプ大統領が打ち出した相互関税政策は、戦後に積み上げてきた自由貿易の秩序を崩壊の危機にさらしている。世界中で景気後退を引き起こす可能性も否定できない。日本には24%の税率が課された。4月3日(米国時間)に先行して25%の追加関税が適用された自動車をはじめ、多くの産業・企業への影響が懸念される。金融機関は取引先の状況を聞き取り、資金繰りなどに支障がでないよう支援してもらいたい。
日本にとって米国は最大の輸出国だ。2024年の輸出額は約21兆円で全体の2割を占める。品目別の輸出額で最も多い自動車を含む輸送用機器だけでなく、農水産物などの輸出も増えており、影響を受ける業種は多岐にわたる。
愛知県を中心に自動車産業の比重が高い東海地区の金融機関は、相談窓口を設置したり、特別融資を打ち出したりするなど、いち早く対応。同様の動きは全国に広がる。すぐに資金繰りに支障がでるとは考えにくいが、先手を打って相談にのり、支援していく姿勢が大事だ。
製造業などは、どの国で生産していようと米国に輸出すれば、高い関税の影響を受ける。米国へ生産拠点を移すことは選択肢とはいえ、高関税政策が、いつまで続くか読めず、難しい判断となろう。
国内は人口が減少するだけに、成長に外需の取り込みは欠かせない。金融機関は新たな輸出先の開拓など中・長期的な視点での支援も重要になってくる。日本政府には自由貿易を守る視点から、粘り強く交渉してもらいたい。
金融市場の動きには細心の注意が必要だ。報復関税の応酬を警戒し、世界各国の株式市場が大幅な下落に見舞われた。米国を含め世界経済全体が冷え込みかねない。その影響は、各国中央銀行の金融政策にも及ぶだろう。不確実性は急速に高まっている。金融機関は有価証券ポートフォリオの点検だけでなく、顧客のフォローが求められる。2025.4.11
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