社説 将来戦略描き再編圧力と対峙を
金融庁は地方銀行や第二地方銀行を対象に、個々の銀行のビジネスモデルが持続可能かを検証するため、銀行首脳との対話を開始した。将来的な人口減少を見据え、単独での生き残りが見通しにくい場合は、再編の選択肢を議論のテーブルに乗せることも辞さない構えだ。金融当局の再編圧力は以前からあったが、マイナス金利政策の終焉によって銀行の経営環境は一変しており、再編のトレンドも今後変化していく可能性がある。
一部メディアは3月中旬、第四北越フィナンシャルグループと群馬銀行が経営統合に向けて協議していると報じた。両社は自社が発表したものではないとしたうえで、「経営統合を含めた経営戦略について検討」を行っているとのコメントを発表した。
「金利ある世界」では運用資産やその原資となる預金の規模拡大が、収益の増加に直結する。一方、2016年から始まったマイナス金利政策の下では、規模拡大より経費削減が優先課題だった。そのため、重複店舗を削減しやすい同一県内の再編が相次いだ。具体的には、19年に十八銀行と親和銀行、21年に第四銀行と北越銀行、三重銀行と第三銀行、25年1月に青森銀行とみちのく銀行、愛知銀行と中京銀行がそれぞれ合併した。
だが日本銀行が利上げに転じ、優先順位が逆転した。預金獲得競争が熱を帯び、いかに預金減少を抑制するかが重要な経営課題となりつつある。
合併・経営統合する金融機関に国が補助金を出す「資金交付制度」は26年3月末に申請期限を迎えるが、金融庁は延長を検討している。これも一種の再編圧力となろう。
ただ、民間企業にとって再編は最も高度な経営判断の一つであり、本来はその判断に国が立ち入るべきではない。利上げ局面に入って銀行の経営環境が好転した今こそ、経営陣が10年後、20年後の将来ビジョンを練り直し、監督官庁も含めたステークホルダーに明確に説明すべきだろう。2025.3.28
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