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社説 貸金庫ビジネス再考を

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 金融庁が3月27日、貸金庫業務の適正化を目的とする監督指針の改正案を公表した。現金などマネーロンダリングの観点でリスクが高い物品が約款などで格納可能物から適切に除外されているか、顧客が貸金庫を利用する際に行職員の立ち合いや、カメラによる撮影で不正な利用を防止できる体制ができているかなどをみていく考えだ。適正な利用へ必要な措置とはいえ、金融機関の負担は重くなる。総合的に貸金庫ビジネスを再考する必要もあろう。
 指針改正の発端は、昨年11月に三菱UFJ銀行で発覚した窃取事件だ。みずほ銀行やハナ信用組合でも同様の事件があったことが公になり、「信用」を揺るがす問題として社会的な批判が高まった。
 金融機関にとって悩ましいのは現金の扱いだ。ほとんどの金融機関は、明確に現金は格納できないとはしていなかった。事件をみても分かるように、現金を貸金庫で保管している利用者が一定数いる。
 法律で現金の格納は禁止となれば、金融機関は対応しやすいだろうが、金融庁案は現金の格納を禁止するものではなく、あくまでマネロンなど不正目的利用を防止できているかを監督上の着眼点とするというものだ。
 すでに、現金は格納できないとした金融機関もでているものの、多くは業界団体のひな型変更を受けて約款・規定を改定し、定期的な利用目的の確認などを通じて、不適切な利用を排除していくことになる。現金を格納している既存利用者には、時間を要しても丁寧に説明していかないと理解は得られまい。
 収益性や営業現場の負担、対策コストを考えれば、北国銀行が3年後の2028年3月末に貸金庫サービスを廃止すると発表したように、貸金庫業務の縮小・撤退も選択肢となろう。一方で、高齢化が進むなかで、盗難・紛失や災害に備えて安心・安全を求めるニーズがあることは、踏まえておく必要がある。2025.4.25


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