「ニッキンONLINE」創刊!
 
HOME > 「ニッキン」最新号から > 社説 > 社説 「顧客本位」の経営実践を、金融政策修正に備えよ

社説 「顧客本位」の経営実践を、金融政策修正に備えよ

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 新型コロナウイルス感染の波は断続的に生じ、「第8波」の拡大も危惧され予断を許さない。だが、行動制限や水際対策の大幅な緩和により、飲食業や観光・宿泊業の回復が期待されるなど、経済活動は正常化に向けて動き出している。さなかの2022年末、日本銀行は今年春の黒田東彦総裁交代を前に、事実上の利上げと受け止められる金融政策修正のサプライズを表明。直後、市場金利は上昇し、過度の円安は収まったが、企業にとってはこの先、借入金の金利上昇局面が目に入る。中小規模の事業者は実質無利子・無担保融資(ゼロぜロ融資)の返済が本番を迎える。さらなる日銀の金融政策見直しは金融機関にとっては収益的にプラス材料ともなるが、弱った取引先をいかに支えるか。自らのサステナブル経営の実践とともに試される1年になる。
 世界経済は国際通貨基金(IMF)が22年の経済成長率(実質GDP伸び率)を3.2%、23年は2.7%へと鈍化を予測。国内は、主要シンクタンクによると22年経済成長率(同)は、設備投資の増加や旅行をはじめ個人消費がけん引し、おおむね1.4~1.6%の範囲。23年は海外経済減速の影響で、やや低下とみる向きが強い。
 日銀の13年から続く大規模な金融緩和政策修正の影響が今後の焦点となる。市場関係者も不意を突かれた形だが、長期金利の変動幅を「0.25%」から「0.5%」に広げた。長引くゼロ金利政策に身動きが取れなかった金融機関には歓迎ムードが漂う。ただ、借り入れのある顧客にとっては金利上昇への“入り口”につながり身を構えよう。
 難題が浮上する。振り返ると、金利引き上げ交渉の経験がある行職員は少なく、顧客と向き合った利上げ交渉は労力を要す。5月以降はゼロゼロ融資返済も本格化。事業再生・成長支援が一層求められ時間を割かれる。早急な人づくりと態勢整備が鍵となる。
 さらに課題が山積する。従来の取引慣行を大きく変える経営者保証問題は、金融庁などが改革プログラムを発表。4月から経営者保証付き融資の抑制に迫られる。次に人的資本投資。金融界でもリスキリング(学び直し)の奨励が徐々に浸透。人材を「資本」と位置付ける企業は魅力が高まり、求めるDX人材採用にも弾みがつこう。春闘、賃上げも見逃せない。22年11月、消費者物価指数は40年ぶりの上昇率を記録。賃上げで物価上昇分吸収、の好循環が望まれる。
 最後に、改めて顧客本位の徹底を願いたい。仕組み債問題では禍根を残した地域金融機関もあるが、規制緩和で事業領域が大幅に拡大したメリットを生かし、地域共創を強く意識した経営のかじ取りに期待する。2023.1.1


ニッキンのお申し込み

ご購読のお申し込みは、インターネット・FAXで受付けしております。

申込用紙をFAX(03-3262-2838)またはお近くのニッキン支社・局までお送りください。

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事