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社説 売り手市場も人材の見極めを

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 2024年春に卒業予定の大学生らを対象とした採用広報活動が3月1日に解禁された。コロナ禍で落ち込んだ経済からの回復で企業が採用を積極化しており、学生側の売り手市場が続く。金融界でも選考の早期化が進むが、母集団の形成を急ぐあまり、人物の見極めが甘くなるケースも見逃せない。求める人材像にマッチした志望度の高い新人採用に力を入れてほしい。
 リクルートの調査によると、24年卒大学生の就職内定率は2月1日時点で19.9%。前年同月比6.4ポイント増え、現行の採用スケジュールになってから最も高い。選考の前倒しが顕著になっている。
 人材の獲得競争が過熱化し、金融機関も採用人数確保で学生の早期囲い込みに動くことは理解できる。さらに、就職人気が低迷するなか、コロナ禍でウェブによる就活が広がり、多くの学生と接する機会を意識的に増やすことで、母集団形成を急ぐ。
 留意すべきは、学生と十分なコミュニケーションが取れているかどうかだ。説明会などの応募を簡略化したことで「志望度の低い学生が増えている」との声も聞こえる。ミスマッチが生じれば、早期離職がさらに増えかねない。採用側は学生との対話を深め、求める人物なのかを見抜くことが求められる。
 採用手法の多様化も検討してほしい。最近は求める人材に直接アプローチするスカウト型採用が広がっている。デジタル化を急ぐ地域銀行で理系学生などとの接点強化を狙いに導入が進み、志望度の高い人材確保に効果を発揮しているという。学生に入社後の働くイメージを持ってもらうためにも有効だろう。
 今春は物価上昇や「人への投資」を映し、金融界でも賃金の引き上げが相次ぐ。学生を惹き付ける要因になるのは間違いないが、企業選びでは将来性や、自らが成長できるかが重要視される。それぞれが自社の「パーパス」を明確に示す時だ。2023.3.10


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