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社説 摩擦恐れず自治体と交渉を

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 地方税や公金の収納コストを誰が負担するかを巡って、地方公共団体と地域金融機関の価格交渉が本格化している。現状は指定金融機関がほぼ無償で請け負うケースが大半だが、地公体に適正コストの負担を求めることが、より効率的な収納方法への移行を促すことになる。金融界は地公体との摩擦を恐れず、粘り強い交渉を展開すべきだ。
 従来型の窓口収納業務は紙の通知書の仕分けや搬送に人手がかかり、膨大な事務作業が発生している。金融機関に手数料を支払っている地公体は少数派のため、採算割れの状態が長年続いてきた。だが、2024年10月から銀行間で公金を送金する際に1件当たり62円の費用がかかるようになる。振込手数料に価格転嫁できなければ、金融機関の負担がさらに増しかねない。
 打開策として、手間のかからない収納方法であるQRコード納付が4月から始まったが、今のところ対象は4税目に限られる。QRコード納付の収納手数料は1件当たり33円で、無償や数円単位が多い窓口収納との逆転現象が起きている。窓口収納の手数料を適正価格に引き上げなければ、地公体側にはQRコード納付を拡大するインセンティブが働かない。デジタル技術を活用して社会的コストを軽減するためにも各金融機関は交渉に本腰を入れるべきだ。
 山梨県は4月からQRコード付き以外の納付書に1件当たり300円の手数料を設けた。山梨中央銀行が、県の課題解決につながるメニューの提案や、電算センターでの収納業務の視察を組み合わせて、丁寧な説得を重ねた結果だ。今のところ山梨モデルのような成功例は少ないようだが、今秋には各地公体の24年度予算が固まるため、それまでの数カ月がヤマ場となる。
 交渉の場では銀行側の負担の大きさを主張するだけでなく、地公体に対してQRコード納付の普及策やデジタル化による経費削減策などを提案していくことが肝要だろう。2023.4.21


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