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社説 多発する不正送金に警戒を

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 不正送金被害が2023年に入り急増している。金融機関を装った電子メールでフィッシングサイトに誘い、インターネットバンキングのパスワードなど個人情報を盗み取る手口は同じだが、誘い文句が一段と巧妙になり、送金される例が後を絶たない。警察庁と金融庁は4月24日、緊急の注意喚起に乗り出しており、金融機関は警戒を高めてほしい。
 警察庁によれば、不正送金被害は1月から4月14日までの間に629件発生し、被害額は10億円を超えた。このペースが続けば年間2500件に達し、最近10年間で最悪の事態になる恐れがある。
 これまでメガバンクやインターネット銀行を装う手口が多かったが、最近は信託銀行や地域銀行に広がる。5月には秋田銀行や福井銀行、みなと銀行を装う例が見られた。ネットバンキングを頻繁に利用していなければ、被害に気づかず初動が遅れる恐れがある。一度だまされれば繰り返し狙われる傾向もある。
 手口は巧妙さを増す。足元で流行するのは官民挙げて強化するマネーロンダリング対策を逆手に取る誘導だ。定期的に本人確認する「継続的顧客管理」を装う手口で、取引目的などを確認するとうたい、フィッシングサイトへ巧みに誘う。関係者によれば「文面は正規のものとほぼ同じで見分けがつかず、送信元だけでしか判別できない」という。
 振り込み失敗や出金停止をうたう例も後を絶たない。利用者が過去数日内に振り込み手続きを行ったなど、思い当たる節があれば偽サイトでパスワードなどを入力しかねない。携帯電話の加入者情報を記録するSIMカードを不正取得する「SIMスワップ」の被害も目立ち始めた。
 フィッシング詐欺や不正送金は次々と新たな手口が見つかり、撲滅は簡単ではない。だが、対策しなければ集中的に狙われかねない。犯罪者があきらめる「粘り強さ」がカギになる。2023.6.2


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