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社説 金融庁新体制で危機への備えを

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 金融庁は7月4日、2年ぶりのトップ交代を含む幹部人事を発令した。長官に栗田照久・総合政策局長(59)、国際部門トップの金融国際審議官に有泉秀・国際総括官(60)がそれぞれ昇格した。国際的な金融危機のリスクが看過できない環境にあり、万一の事態では迅速かつ的確な対応が問われる。他方、政府が掲げる「資産運用立国」の実現に向けて、新NISA(少額投資非課税制度)が始まる2024年は重要な時期であり、万全の準備を期待したい。
 財務省と金融庁の前身である旧大蔵省の入省年次は、栗田氏が1987年、有泉氏が88年。官僚としてバブル経済期を知るほぼ最後の世代だ。バブル崩壊後の金融危機はこの世代の原風景だろう。2008年の米国発金融危機では、栗田氏が巨大金融グループ、有泉氏が為替市場を監視する室長の立場で危機対応に当たった。ともに銀行第一課長や証券課長の花形ポストを歴任し、銀行・証券会社の不祥事への対応も経験豊富だ。
 3月の米シリコンバレー銀行破綻は、SNSでの経営不安の拡散が一因となった。欧州にも飛び火した金融不安は沈静化したが「危機はいつも形を変えてやってくる」(金融庁幹部)。米連邦準備制度理事会(FRB)は6月30日に発表した論文で、金融セクターが08年以来の「最も厳しい状況」にあると指摘。金融庁には突発的な事態に備えて先を見越した対応を期待したい。
 前長官の中島淳一氏は、抜本的なNISA改革に道筋をつけた。国民の関心を資産運用に向ける千載一遇の好機であり、預貯金選好の国民性を変える「最後のチャンス」(市場関係者)との見方もある。今秋の臨時国会での成立を目指す金融商品取引法改正案などの法整備や、国民の金融リテラシーを高める金融教育の普及、運用商品を販売する金融機関の規律付けなど課題は多い。投資経験の浅い個人投資家でも安心して取引できる市場の育成が急務となる。2023.7.7


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