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社説 関東大震災100年、教訓忘れず

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 9月1日、10万5千人の死者・行方不明者を出した関東大震災から100年を迎える。当時の経済被害は国民総生産(GNP)の37%に達する。国内総生産(GDP)比2%だった阪神・淡路大震災や3%だった東日本大震災に比べ、被害の大きさに驚かされる。改めて当時を振り返り、防災・減災の意識を高めたい。
 内閣府の専門調査会が震災の教訓を継承するためにまとめた資料の記述は関東大震災による被害の甚大さを物語る。銀行界に限っても、東京市(現在の東京23区に相当)に立地していた銀行本店の87%に当たる121行が焼失した。東京銀行集会所組合の加盟行で無事だったのは日本勧業銀行や三菱銀行など5行だけだったという。支店も71%の222カ店が消えた。東京府と神奈川県の銀行では、商品や有価証券などを担保にした貸出金が4割に上り、大半が危険にさらされたとある。
 復興過程では、被災企業を救済する震災手形の発行が4年後の金融恐慌につながった。内閣府の資料は「真の被災者へ届かず、不良企業の温存に手を貸した形になったことが日本経済の足かせになった」と結論づけた。政治や行政当局は教訓とすべきだろう。
 南海トラフ地震や首都直下型地震の発生確率が今後30年以内に70%程度と予想されており、官民ともに警戒は怠れない。被害抑制や早期復旧に向け、事業継続計画(BCP)が重要になる。金融機関の策定は進む一方、中小企業の進捗(しんちょく)は芳しくなく、不安が残る。
 帝国データバンクによれば、策定意向を持つ企業は3年連続で5割を下回った。毎年のように豪雨被害などが発生しているにもかかわらず足取りは鈍く、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年の52%から低下。策定済みの中小企業は15%にとどまる。金融機関は100年の節目に改めて取引先と対策を協議してほしい。課題となるのはノウハウや人材・時間の確保であり、支援も重要になる。2023.9.1


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