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社説 経済対策の政策効果検証を

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 政府は11月2日、予算規模が17兆円を超える総合経済対策を閣議決定した。財源の裏付けとなる2023年度補正予算案の総額は13.1兆円となる。世界中で経済活動が停止したコロナに対応するための経済対策に比べれば少ないが、リーマン危機対応の09年度補正予算(13.9兆円)や東日本大震災対応の11年度第3次補正予算(12.1兆円)に匹敵する異例の規模である。バラマキの懸念が残るなかで、政策効果が問われる。
 経済対策の柱は、所得税と住民税を合わせて1人当たり4万円の定額減税だ。扶養家族も対象となるため、2人家族なら計8万円、4人家族なら計16万円となる。納税していない低所得者には7万円を給付するが、こちらは1世帯当たりの支給額だ。
 政府が20年にコロナ対策として全国民に1人当たり10万円を配った特別定額給付金も、所得制限なしの一律給付だった。マネーフォワードが持つ家計簿データを分析した研究では、労働所得の低い世帯や銀行預金などの流動資産が少ない世帯の方が、より多くの給付金を消費に回したことが裏付けられた。当時は多くの国が給付金を支給したが、一律支給はまれだった。
 定額減税は、支持率が低迷するなかで首相が唐突に打ち出した感が拭えない。政権浮揚の思惑が透ける。客観的データに基づいて過去の政策の効果を検証したうえで、その教訓を次の政策に生かす政治風土の醸成が必要だろう。
 今の国会に提出する補正予算案は、財源の多くを赤字国債に頼る見通し。日本の国債残高は1千兆円を超え、先進国で最悪の財政状態にある。日本銀行の政策変更により、足元では長期金利が上昇している。今後はマイナス金利政策の解除も視野に入るなか、利払い負担が増える可能性が高い。財政規律の回復が急務だが、今回の経済対策は市場に逆のメッセージを送りかねない。放漫財政で将来にツケを回すことは許されない。2023.11.10


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