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社説 地方創生10年、遠い目標 「つなぐ力」磨き成長めざせ

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 2024年が始まる。金利や国際情勢など金融機関が目配りすべきリスク要因は多い。なかでも気がかりなのが、地方経済の縮小という地域金融機関が最も警戒すべき脅威が、じわじわ高まり続けていることだ。
 政府が14年に地方創生を打ち出してから10年。東京一極集中を是正し、地方の人口減少に歯止めをかける目標の実現は遠い。金融機関もヒト・モノ・カネを投入し、地元自治体と足並みをそろえて取り組んできたが、自信をもって「持続可能性が高まった」と言える地域は少ないだろう。
 コロナ禍前、19年度の都道府県別総生産(GDP)を13年度と比較してみると、全国の伸び8.1%に対し、11県が6%を下回った。1%を割った県もある。総じて伸び率が低い県では人口減少率が高い傾向がみられる。
 政府が異次元の少子化対策を講じたとて、すぐに人口が増加に転じるとは考えにくい。人口減少下で地域の稼ぐ力を高める必要がある。そのカギの一つは海外を含めて地域外の需要をいかに取り込むかだ。
 金融機関には金融の枠にとどまらない仲介機能「つなぐ力」の発揮が求められる。人や技術、地域をつなぎ、地元で創出される商品・サービス、観光資源などに磨きをかければ、取り込める需要はある。 
 実際、金融機関は規制緩和により打つ手が増え、地域商社や人材紹介など、新しい取り組みが広がった。事業承継へ企業をつなぐM&A(合併・買収)も増えた。次の段階へ、点から面への展開や低効果施策の見直しが求められよう。盛んになった子会社事業では、収益性も無視できない。
 地方創生の視点でとらえれば、不動産仲介の解禁は期待したいところだ。深刻化する空き家・空き店舗問題を解決する有効な手段になろう。
 人口流出の一因は、若者にとって魅力ある雇用の場が地元に少ないことにある。熊本県のような大手半導体企業の進出により、これまでの流れが一気に変わる例が、全国各地で実現できるとは思えない。事業再構築や生産性向上、起業・創業支援を一つ一つ重ね、魅力ある働く場を増やしていく必要がある。金融機関自身が、賃金を含めて働き方改革を進め、地域のけん引役になることもできよう。
 コア業務に目を向ければ、預貯金の東京集中が気になる。23年3月末の都道府県別の預貯金シェア(金融ジャーナル・金融マップ)は、最も高い東京都が28.4%で、直近10年で4.2ポイント上昇した。お金の偏在は地域経済の縮小に拍車をかけかねない。
 地方創生は一朝一夕に実現しない。これまでの取り組みを検証し、新たな一歩を踏み出す年にしたい。2024.1.1


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