社説 激甚化する風水害に備え高めよ
日本列島が本格的な梅雨のシーズンを迎える。近年は気候変動の影響で豪雨が頻発し、各地で甚大な被害が発生している。金融機関の営業拠点が浸水に見舞われるケースも増えてきた。ただ、風水害に対する業務継続計画(BCP)は地震に比べて浸透が進んでいないとの指摘もある。備えを高め、金融インフラの維持に万全を期してほしい。
2018年に発生した西日本豪雨を始め、この時期は毎年のように広い範囲で豪雨災害が起き、河川の氾濫や浸水などをもたらしている。5月末の台風1号でも九州から関東にかけて大雨と強風による被害が出た。短期間に強い雨が降る頻度はさらに高まるとみられ、金融機関も対策の底上げを急ぎたい。
地震は予測が難しい突発的災害なのに対し、風水害は台風上陸後などに時間を置いて被害が起こる進行型災害と言われる。そのため事前の危機回避行動が取りやすく、適切なBCPを策定しておけば被害を最小限に抑えられる。
具体的には、自治体のハザードマップに基づく店舗への浸水リスク把握や非常用発電の動作確認、顧客と従業員の安全を確保するための臨時休業の基準明確化などが挙げられる。また気象庁は5月から、局地的な豪雨をもたらす線状降水帯の半日前予測を「地方単位」から「都道府県単位」に変更した。対象が細分化され、より早い段階から対策が取れる。迅速に情報収集できる体制を敷いておきたい。
内閣府の調査では重視する災害リスクとして90%以上の企業が地震を挙げたが、水害は半分に満たない。金融機関でも被害を受けた先ではBCPハンドブックの見直しや営業店への止水板設置など教訓を生かした対策が進む。
被災経験がないと影響をイメージしにくい面はあろうが、集中豪雨は自然災害が比較的少ない都市部を含め、どこでも起こりうる。対策の重要性を再認識し、備えを平時から厚くしておきたい。2024.6.7
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