社説 「失われた40年」にしないために
7月1日は「銀行の日」。銀行の役割や社会的責任を確認する日として本紙が1993年に制定した。
3月4日に日経平均株価が史上初めて4万円台に乗せ、同19日には日本銀行がマイナス金利政策の解除を決めるなど、日本経済は長らく続いたデフレから抜け出し、大きな転換点にある。全国銀行協会の福留朗裕会長(三井住友銀行頭取)が、4月の本紙インタビューに「失われた30年から脱却する千載一遇のチャンス。失われた40年にしない覚悟で臨む」と述べているように、成長軌道を確かなものにするため、銀行界全体が同じ思いで経済を支える役割を果たしてもらいたい。
上場企業の2024年3月期決算は、純利益の合計が3期連続で過去最高を更新したが、原材料価格高騰や円安の影響を価格に転嫁できず苦しむ中小企業は少なくない。帝国データバンクによると5月の倒産は1016件で前年の同月に比べ46%増えた。黒字のまま廃業するケースも多い。廃業を、ただ見過ごせば、地域は衰退する。中核企業につなぐなどして、事業と雇用を守る支援も期待される。同時にスタートアップなど新事業の創出を後押しし、新陳代謝を促すことが重要だ。
日銀のマイナス金利解除で、銀行の収益環境は好転したが、安堵してはいられない。人口減少という容易ならざる課題がある。とりわけ地域銀行には、経営基盤にかかわる深刻な問題であり、地域の持続可能性を高める取り組みが求められよう。近年の銀行法改正で、資金融通以外で事業者を支える手段も増えた。
バブル経済の生成と崩壊で始まった“失われた30年”。その一因が過剰融資に走った銀行界にあったことは疑いようがない。銀行法第一条は、「銀行の業務の健全かつ適切な運営を期し、もつて国民経済の健全な発展に資することを目的とする」と定めている。転換期にある今こそ、原点を見失わないようにしたい。2024.6.28
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