社説 MUFGはガバナンス見直しを
銀行と証券のファイアウォール(FW)規制違反などで、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下の銀行と証券2社が金融庁から業務改善命令を受けた。顧客の同意を得ずに非公開情報を共有するなど内部管理体制の不備があった。銀証連携ビジネスの土台を揺るがす事態である。MUFGは真因の究明と、再発防止に向けたガバナンスの見直しを急ぐべきだ。
3社のFW規制違法は2021~23年に26件。法人顧客がグループ証券への情報提供を拒否しているのに、三菱UFJ銀行の専務執行役員(当時)が株式売却に関する非公開情報を証券側に伝えていた。また、銀行に禁じられている有価証券の引き受け交渉や勧誘を行った事案もあった。
MUFGの亀澤宏規社長は株主総会で「銀証連携における法令順守意識の浸透不足に加え、モニタリング部署でのけん制が不十分だった」と振り返った。グループ収益を優先する余り、顧客本位が軽視されたとも指摘される。ガバナンスの欠如がもたらした結果と言わざるを得ない。
今回、親会社のMUFGへの行政処分は見送られたが、グループ全体のコンプライアンス徹底や規範意識の浸透、顧客目線の営業回帰へ指導力を発揮しなければならない。
FW規制は近年見直しが進む。ファイナンス手段の多様化でローンや社債などをまとめて提案してほしいとの企業ニーズが高まっているためで、22年には上場企業に関する情報共有規制が緩和された。その後も非上場企業などに関する規制見直しが検討されてきたが、今回の不祥事でその流れに待ったがかかる可能性もある。規制緩和を主張してきたのに、日本の国際競争力を高められる環境を逆に自ら遠ざけてしまいかねない行為だ。
MUFGは日本を代表するメガバンクグループの一社としての責任を自覚し、徹底した再発防止で信頼を取り戻すことが最優先で求められる。2024.7.05
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